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Santa Lab's Blog


「とりかへばや物語」巻一(その33)

「いと罪深くのみ思ひ知られ侍れば、この御気色見果てて、深き山に跡を絶えなんと思ふ」と語らへば、「そはしも、さ思したらん時はをくらかし給ふなよ。かくて世にはあらじとそぞろに思ゆる心の、年月に添へても増さり侍れど、さすがにえこそ思ひ絶ち侍らね」と、あわれに打ち語らひ明かして、各々をのをの罷でても、この中納言よろづめでたく優れたる中にも、掲焉に細やかなる気配けはひなどの、女にていみじう見まほしう、をかしうもあるかなと、恋しきにぞ、いとど妹の姫君は思ひ遣られける。




「わたしもたいそう罪深いと思い知らされて、あなたの表情を見て、深山に籠もろうと思いました」と話すと、中納言【姫君】も「わたしも同じです、その時はわたしを置いていかないでください。こうして世にいたくないと思う気持ちが、年月に添えて増しているのですが、さすがに思い切れずにいるのです」と、哀れに話し明かして、各々出て行きました、この中納言【姫君】は美しく才能に優れる人の中でも、とりわけ心使い細やかで、女として世話をしたいと思うほど、魅力的で、恋しく思われて、宰相中将はまして姫君【若君】のことを恋しく思うのでした。


続く


by santalab | 2014-09-20 15:02 | とりかへばや物語

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