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「増鏡」叢時雨(その21)

さて都には、二十四日の夜、六波羅より常陸ひたちかみ時知ときとも馳せまゐりて、百敷ももしきの中をあさり騒ぐ。そのほど、人の曹司ざうしなどに、おのづから落ち残りたる女房にようばうの心地、言はん方なし。おはします殿を見れば、近き御厨子づし・御調度てうどども、何くれ、硯なども、さながらうち散りて、ただ今までおはしましける跡と見えながら、宮人などだに一人もなし。女房の曹司曹司より、樋洗ひすましめくわらはなど、我先にと走り出で、調度ども運び騒ぎ、くづれ出づる気色ども、いと浅ましく、目もあやなり。




さて都では、二十四日の夜、六波羅探題より常陸守時知(北条時知)が馳せ参り、百敷([宮中])の中を捜し回りました。その時、人の曹司([部屋])などに、残っておりました女房どもの恐ろしさは、言いようもないものでございました。後醍醐天皇(第九十六代天皇)のおられた殿を見れば、近くの厨子([置き棚])・調度([家具])、何もかも、硯までも、取り散らして、ただ今までおられた跡のように思われましたが、宮人は一人もいませんでした。女房の曹司曹司より、樋洗し([便器の清掃などをする、身分の低い女性])ほどの女童などが、我先にと走り出て、調度どもを運び出し、なだれ出るように逃げ出しましたが、とても嘆かわしく、ただあきれるばかりでございました。


続く


by santalab | 2014-09-24 08:20 | 増鏡

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