Santa Lab's Blog


「松浦宮物語」一(その37)

あまり事々しくも見ゆべきかんざし、髪上げ給へるかほ付き、さらにけどほからず。あてになつかしう、清くらうたげなる事、ただ秋の月の隈なき空に澄み上りたる心地ぞするに、いみじき心惑ひを抑へて、念じかへしつつかの琴を聞けば、よろづの物の音一つに合ひて、空に響き通へる事、げにありしにおほく優りたり。とかくのたまふこともなけれど、ただ夢路ゆめぢに惑ふ心地ながら、この得し琴を取りて掻き立つるを見て、もとの調べを引き替へて、はじめより人の習うふべき手を、とどこほるところなくひとわたり弾き給ふを聞くままに、やがてたどらずこの音に付きて掻き合はすれば、我が心も澄み勝るからに、すずろに深きところ添ひて、やがて同じこゑの出てづれば、手に任せてもろともに弾くに、たどるところなく弾き取りつ。




おおげさにも見えるかんざし、髪を結い上げた顔付きも、違和感を覚えませんでした。上品で親しみもあり、美しくてかわいらしく、ただ秋の月が雲なき空に浮かんでいるのを見るような気がして、弁少将はたいそう動揺するのを堪えながら、心に念じて女【華陽公主】の琴の音を聞くと、すべての音が調和して、空に響き渡る様子は、今まで聞いたどれよりも優れていました。言葉も出ないほど見事なものでした、弁少将はただ夢路で聞くような気がしながらも、老人から与えられた琴を手にとって弾くと、女は調べを変えて、曲のはじめより弾き方を、止めることなく最後まで弾くと、弁少将はこれを聞いてすぐに手を止めることなく女の琴の音に合わせて、心も澄み渡り、奥義を悟り、やがて同じ音色を奏でました、女の手に合わせて一緒になって琴を弾くうちに、弁少将はすっかり技を習得しました。


続く


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by santalab | 2014-10-09 23:30 | 松浦宮物語 | Comments(0)

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