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Santa Lab's Blog


「住吉物語」上(その20)

寝殿の東面ひんがしおもてに住ませければ、少将、過ぎ様に西の対を見れば、由ある様あれば、「いかなる人の住むにや」とゆかしく思して明かし暮らすほどに、少将、秋の夜の、つれづれ長き寝覚めに悲しく物あはれなる小夜中に、ねや近きおぎの葉に、そよめき渡る風の音も夜毎に通ふ心地して、いと肌寒き枕の下に夜もすがら音なふきりぎりすの声も、その事となくなきに、涙抑へ難き、折節、妻音優しき筝の琴の音、空に聞こえければ、「あな由々し、こはいかに」と思ひて、枕をそばだてて聞き給ひければ、西の対に聞きなし給ひけり。




寝殿([母屋])の東面に三の君は住んでいました、少将が過ぎぎまに西の対屋([離れ])を見れば、趣きがあって、「どんな人が住んでいるのだろうか」と気になっていました、少将が、秋の夜長を、持て余して夜中に目を覚ますと物悲しく思う夜でした、寝屋近くの荻([イネ科の多年草])の葉を揺らす風の音にさえ、夜毎に寝屋に通うような気がして、とても肌寒い枕の下には、一晩中鳴くきりぎりす([こうろぎ])の声も聞こえて、あわれに思いながら聞いていましたが、ふと涙がこぼれて人恋しくなりました、そんな時、物柔らかな琴の音が、かすかに聞こえたので、「物悲しい琴の音が聞こえる、誰が弾いているのだろうか」と思って、耳をそばだてて聞いていると、西の対屋([離れ])から聞こえてくるのでした。


続く


by santalab | 2014-10-21 20:53 | 住吉物語

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