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「松浦宮物語」一(その50)

生ける心地もせぬに、御門もほどなくうち続き隠れ給ひぬれば、国の内、思へる様いみじきはさる物にて、この御門の御子まだいはけなくおはする、太子に立ち給へると、御おととの燕王と聞こゆると、国を争ひて、つはものの乱れたちまちに出で来ぬ。親しう仕うまつりし限りは、太子の御方にて惑ひ合へり。かつ並びたる人も、いくさたけく勇めるに恐れてあなたに心を付け、あるは引きて移り行く。あるは兵を集めて后・太子をかたぶけ奉らむとす。いへを並べ、かどを並べて、戦ひの外の事なし。あるは、はかりごと顕はれて、召し捕りて命を亡ぼされ、あるは、将相しやうしやう国のまつりごとり、兵を司るべき人々をはかり殺して、逃げてあなたに従ひ、騒がしき事言はむ方なし。




華陽公主が亡くなられて弁少将は生きる気力さえ失っていましたが、帝もほどなく続いてお隠れになられて、国内は、悲しみに包まれました、帝の皇子はまだ幼くございましたが、皇太子に立っておられました、帝の弟で燕王と呼ばれるお方と、国を争って、兵乱が起こりました。帝のおそばで仕えていた者たちは一人残らず、太子の方に付いてどうなるのかと心配しました。そのうち、燕王の軍兵の強さに恐れて敵に付こうと決めて、離れて行きました。またある者は兵を集めて后・太子を討とうとしました。家を並べ、門を並べる者でさえも、戦いのことばかり考えていました。ある者は、謀略が露見して、捕らわれて誅され、ある者は将相([将軍と宰相=大臣])として国を思うままに動かし、または兵を統帥する人々を謀殺して、逃げて燕王方に付いて、動乱は激しくなるばかりでした。


続く


by santalab | 2014-10-27 21:44 | 松浦宮物語

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