人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「増鏡」今日の日影(その9)

今宵こよひ二位殿、今出川いまでがはへ罷んで給ひて、手車の宣旨り給ふ。御送りには御子の公衡きんひらの中納言。御をひ通重みちしげ左衛門さゑもんかみなど、殿上人ども数多あまたなり。縫殿ぬひどのぢんより出で給ふ気色、いとよそほし。まことや、御入内の夜の御使ひ、勾当こうたうの内侍まゐれりし禄に、表着うはぎ・唐衣を賜はる。御消息せうそこの御使ひに参られしうへの人も、女の装束しやうぞくかづきながらかへり参りて、殿上の口に落とし捨つ。殿司とのもりづかさぞ取る習ひなりける。後朝こうてうの御使ひには、公実きんざね中将ちゆうじやうなりし。公衡きんひらの中納言対面して、勧盃けんぱいの後、これも女の装束被けらる。




その夜二位殿(中院顕子あきこ。西園寺鏱子しようしの生母)が、今出川に参られて、手車([屋形に車輪をつけた車で、前後に突き出ているながえを人の手で引くもの。これに乗って内裏に出入りするには、てぐるまの宣旨による勅許が必要であった])の宣旨がございました。見送りには二位殿の子である公衡中納言(西園寺公衡)でございました。甥の通重左衛門督(中院通重)など、殿上人が数多く供をいたしました。縫殿([天皇および賞賜の衣服を裁縫し、 また、女官の考課をつかさどった役所])の陣より出られる姿は、たいそう美しいものでございました。定かではございませんが、入内の夜のお使いに、勾当内侍が参られた禄に、表着([衣を重ねて着るとき、一番上に着る衣])・唐衣([装束の一番上に着用する上半身だけの短衣])を賜られたということでございます。消息([文])のお使いに参られた上(第九十二代伏見天皇)のお使いにも、女の装束を賜られて帰り、殿上の口に落とされました。殿司([後宮十二司の一つ。後宮の 清掃・灯火・薪炭などをつかさどった役所。また、その女官。職員はすべて女性])が取る習わしでございました。後朝([後朝の文]=[平安時代の貴族の男女が一夜を共にした後、男性から女性に宛てて送った恋文])のお使いは、公実中将でございました。公衡中納言(西園寺公衡)が対面されて、勧盃の後、同じく女の装束を賜りました。


続く


by santalab | 2015-02-03 08:49 | 増鏡

<< 「曽我物語」鬼の子取らるる事(...      「増鏡」今日の日影(その7) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧