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「曽我物語」箱根にて仏事の事(その11)

さてしもあるべきにあらざれば、泣く泣く母は、曽我に下り、虎は、大磯おほいそかへらんとす。別当べつたう五朗ごらうに別るる心して、「さても、この度の御仏事、あり難くこそさうらへ。過去くわこ幽霊いうれい、定めて正覚しやうがくなり給ふべし。また、大磯の客人の御心ざしこそ、世に優れては候へ。構へて構へて、怠らずとぶらひ給へ」とおほせられければ、虎も、涙をおさへて、「仏事とうけたまはり候へば、まことに恥ぢ入る心し、飽かぬ別れの道、いつかは怠り候はん」とまうしければ、「数多あまたの宝を積まんより、まことの心ざしにはしかずとうけたまはる。




いつまでも留まっているわけには参りませんでしたので、泣く泣く母は、曽我(現神奈川県小田原市あたり)に下り、虎御前(大磯の遊女で祐成すけなりの妾)は、大磯(現神奈川県中郡大磯町)に帰ることにしました。別当(箱根別当。行実ぎやうじつ僧正)も五朗(時致ときむね)と別れるような気がして、「さても、この度の仏事は、りっぱでございましたな。過去幽霊([死者の魂])も、きっと正覚([仏の悟り])を得たことでございましょう。また、大磯の客人(虎御前)の心ざしは、世に優れておられます。勤行に励まれて、怠りなく弔いなさいませ」と申せば、虎御前も涙を抑えて、「仏事などと申されますれば、とても満足でなくお恥ずかしいことでございますが、飽かぬままの別れの道でございますれば、怠ることはございません」と申しました。別当は「多くの宝物を積むよりも、心からの祈りが大切だと聞いております。


続く


by santalab | 2015-02-16 08:31 | 曽我物語

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