Santa Lab's Blog


「曽我物語」惟喬・惟仁の位争ひの事(その9)

しかれば、各々剣を争ふゆゑに、互ひに朝敵てうてきに成りて、源氏世を乱せば、平氏勅宣を以つて、これを制して朝恩てうおんに誇り、平将へいしやう国をかたぶくれば、源氏しよめいに任せて、これを罰して、勲功くんこうきはむ。しかれば、近頃、平氏長く退散して、源氏おのづから世に誇り、四海の波瀾ををさめ、一天のはうきよ定めしよりこの方、りらくりんゑたかいいて、吹く風のこゑ穏やかなり。しかれば、叡慮を背くせいらうは、色を雄剣おうけんの秋の霜にをかされ、てこそをみたすはしは、音を上弦しやうげんの月に澄ます。これ、ひとへに羽林うりんの威風、先代にも越えて、うんてうのゆゑなり。しかるに、青侍せいしをひそめて、せいとの乱れを制し、私曲しきよくの争ひを止めて、帰伏きぶくせらるるはなかりけり。




こうして、源氏平家は剣を争うが故に、互いに朝敵となり、源氏が世を乱せば、平氏が勅宣により、源氏を制して朝恩に誇り、平将が国を傾けようとした時には、源氏しよめい(詔命せうめい=天皇の命令?)に従い、平家を罰して、勲功を極めました。そして、近頃では、平氏は長く退散して、源氏が自然と世に誇り、四海([国内])の波瀾を治め、一天のはうきよ(法規?)を定めてより、りらくりんゑたかいいて(緑林枝枯れて?緑林=漢の王匡・王鳳などが反乱し、湖北省の緑林山にこもり盗賊となったという『後漢書劉玄伝』の記事から、盗賊。は鳴りを潜めて)、吹く風の音は穏やかでした。そして、叡慮([天子の考え])に背くせいらう(青葉せいよう)は、色を雄剣([秀れた剣])の秋の霜([鋭利な剣])に害されて、てこそ(朝章てうしやう=朝廷の掟)をみたすはし(乱す白浪?)は、上弦の月のようにたちまち滅ぼされました(上弦の月は夜半に沈む)。これは、申すなら羽林([天子の宿衛をつかさどる官])の威風が、前の代にも越えて、うんてう(厳重げんじやう=厳しい様?)であったためです。ですから、青侍([身分の低い若侍])は本意を止め、せいと(成都)の乱れを制し、私曲([不正な手段で自身だけの利益をはかること])の争いを止めて、源氏に帰伏([服従])しない者はいませんでした。


続く


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by santalab | 2015-02-22 08:43 | 曽我物語

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