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「宇津保物語」藤原の君(その29)
ここは、上野の宮。大殿四つ、板屋十、蔵あり。池広し、山高し。これ、寝殿。宮おはし、男ども十人ばかり、松原、植木、前栽あり。ここは、童部、博打、集まりをりて、物食らふ。一御蔵開けて、家司ども、ある限りの物どもを運び出して、この人どもに呉る。
ここは、上野の宮の御殿です。殿が四つに、板屋が十、蔵もあります。池は広く、高い山もあります。ここは、寝殿([母屋])です。上野の宮がいます、男たちが十人ほどいます、松の原、植木、庭もあります。ここには、京童部(ちんぴら?)、博打(やくざ?)たちが、集まって物を食べています。蔵を一つ開けて、家司(親王家や三位以上の者には、家司という役人、家政夫のようなものでしょうが、朝廷から派遣されていたらしい)が、ある限りの品物を蔵から運び出して、京童部、博打たちに与えています。
(続く)
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