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例の宰相、
旅寝する 身には涙も なからなむ 常に浮きたる 心地のみする
たびごとに 空に立ち居る 塵なれや 露ばかりにも 浮かぶなるかな
例の宰相(源実忠さねただ)は、
旅先で寝る、我が身には涙さえも、ありません。ただいつも落ち着かないような、気がするばかりです。
気が落ち着かないのでしたら、ご自分を空に立ち上る、塵とでもお思いになればよろしいのでは、露ほどの涙も、浮かぶかもしれませんよ。
(続く)
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