人気ブログランキング |

Santa Lab's Blog


「曽我物語」三井寺大師の事(その6)

証空しようくう進退しんだいここにきはまり、師匠ししやう恩徳おんどくを報じ奉らんとすれば、母の不孝ふけう永却えいごふにも浮かび難し。身の置き所なかりければ、母の御前にひざまづき、「不孝のおほせ、悲しみても余りあり。奈落の責め、いつをか期せん。この世は、仮りの宿りなり。未来こそ、まことの住みかにてさうらへ。師匠の命に代はり奉らば、御迎ひにもまゐるべし。さあらば、一つはちすの縁にも、などかはならで候ふべき。思し召し切り候へ」とて、名残りの袂を引き分くる。母は、なほも慕ひ兼ね、「然らば、みづからをも連れ、一つ蓮の縁になし給へや。捨てられて、老いの身の、何と成るべき」と、悶え悲しみ給ふ。




証空は、どうすることもできずにいました、師匠(智興ちかう)の恩徳に報いようとすれば、母の不孝から、永却遁れることはできませんでした。どうしようもなく、母の御前にひざまずき、「親不孝と申されますか、悲しみは余りあります。奈落([地獄])の責めから、遁れることは永劫ないでしょう。この世は、仮りの宿です。未来こそ、本来の住みかです。師匠の命に代わることができたなら、お迎えに参りましょう。そして、一つ蓮の縁にも、なりましょう。どうか諦めてください」と申して、名残りの袂を引き放しました。母は、なおも諦めきれずに、「そう申すのならば、このわたしもともに、一つ蓮の縁にしなさい。捨てられて、老いの身ならば、そうするほかありません」と、嘆き悲しみました。


続く


by santalab | 2015-04-19 13:00 | 曽我物語

<< 「曽我物語」三井寺大師の事(その7)      「曽我物語」三井寺大師の事(その5) >>
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧