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「曽我物語」費長房が事(その1)

古きを思ふに、昔、大国たいこくに、費長房ひちやうばうと言ふ者あり。仙術せんじゆつを習ひ得て、暗きところもなかりしが、天に上がる術を習はずして、いまだ空しく凡夫ぼんふに交はりありきけり。ある時、所用の事あつて、長安ちやうあんの市に出でて、商人あきびとに伴ひしに、ある老人らうじん、腰に壺を付けて、この者、市に交はりける。知音ちいんは、知ることわりにて、この者、只人ただひとならずと、目を放さで見るに、この老人、かたはらに行き、腰なる壺を下ろし、その壺に出で入りにけり。さればこそ、仙人なれとて、その人のいへに付きて行きぬ。




古い時代のことだが、昔、大国に、費長房と言う者がおったそうだ。仙術を習得して、知識も豊富だったが、天に上る術を知らず、空しく凡夫に交わっておった。ある時、所用があって、長安の市に出かけようと、商人に付いて行くと、ある老人が、腰に壺を付けておってな、その老人の後に付いて、市まで出かけたのだ。知音([互いによく心を知り合った友])は、自ずと知れるもの、この者は、只人ではないと、目を放さずに見ておったが、この老人は、路地の端で、腰に付けた壺を下ろして、その壺に出入りしたのだ。きっと、仙人に違いないと、費長房はその人の家に付いて行ったそうだ。


続く


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by santalab | 2015-04-22 14:08 | 曽我物語 | Comments(0)

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