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Santa Lab's Blog


「曽我物語」千草の花見し事(その11)

母聞きて、「や、殿、それも、母が言ふ事を聞きて、亀を放ちてこそ、成仏じやうぶつはし給へ。なんぢ、何となく我らはがをしへを聞かざるぞ」。「わろき子を思ふこそ、まことの親の御慈悲にてはさうらへ。また、母のあはれみの深きには、事長く候へども、ある国のわう、一人の太子のなき事を歎き、天に祈りし感応かんおうにや、后懐妊くわいにんし給ふ。国王こくわうの喜びなのめならず。されども、三年まで生まれ給はず。公卿くぎやう僉議せんぎありて、博士を召してたづね給ふ。勘文かんもんに曰く、『御くらゐは転輪聖王じやうわうたるべし。ただし、御産はたひらかなるまじ』とまうす。后聞き給ひて、『賢王けんわうの太子、如何で空しくすべき。みづからが腹を割き破りて、王子わうじをつつがなく取り出だすべし』とのたまふ。大王だいわうおほきに歎きて、許し給はず。




母はこれを聞いて、「なんと、殿よ、それも、母が言うことを聞いて、亀を放ったからこそ、成仏したのです。お前は、なぜわたしの言うことを聞かないのですか」と答えました。五朗(曽我時致ときむね)は「悪い子を思ってこそ、本当の親の慈悲ではありませんか。また、母の憐れみの深さは、長くなりますが、ある国の王が、一人の太子もないことを嘆き、天に祈った感応([信心が神仏に通じること])か、后が懐妊しました。国王はたいそうよろこびました。けれども、三年経っても子は生まれませんでした。公卿僉議あって、博士を呼んで訳を訊ねました。勘文([朝廷から諮問を依頼された学者などが由来・先例等の必要な情報を調査して報告を行った文章])には、『位は転輪聖王([古代インドの思想における理想的な王])に値します。ただし、お産は平らかではないでしょう』とありました。后はこれを聞いて、『賢王となる太子を、亡くす訳には参りません。このわたしの腹を割いて、王子を無事取り出してください』と申しました。大王は、たいそう嘆いて、これを許しませんでした。


続く


by santalab | 2015-04-22 19:26 | 曽我物語

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