よくよく見廻りて、『今は出でん』と言ふ。老人、竹の杖を与へて、『これを付きて出でよ』と言ふ。すなはち、付くと思へば、時の間に、をしみつと言ふ所に至りぬ。この杖を捨てければ、すなはち竜と成りて、天に上がりぬ。費長房は、鶴に乗りて、天に上りけり。これも、功を積もる故なり。三年までこそなくとも、待ちて見よ」とぞ申しける。
壺の中の世界をよくよく見廻ってから、費長房が『壺から出ましょう』と申した。老人は、竹の杖を費長房に与えて、『これを付いて出よ』と申した。すぐさま、費長房が杖を付いたかと思えば、あっという間に、をしみつ(睢水?項羽と劉邦の戦い、睢水の合戦の場所。現河南省)と言う所に着きました。この杖を捨てると、たちまち竜となって、天に上っていった。費長房は、鶴に乗って、天に上ったそうだ。これも、功を積んだ故のことよ。三年とは言わないが、しばらく待ってみようではないか」と申しました。
(続く)