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Santa Lab's Blog


「曽我物語」河津が討たれし事(その2)

秋野の摺り尽くしたる間々あひあひに、引き柿したる直垂ひたたれに、まだら行縢むかばき裾たぶやかに履き成し、鶴の本白もとじろにてぎたる白拵しらこしらへの鹿矢ししや筈高はずだかに負ひ成し、千段籐せんだんどうの弓真ん中取り、萌黄裏もよぎうら付けたる竹笠、木枯しに吹きそらせ、宿月毛さびつきげむま五臓ざうおほきなるが、尾髪をかみあくまで縮みたるに、梨子地なしぢに蒔きたる白覆輪しろぶくりんの鞍に、連著鞦れんじやくしりがひの山吹色なるを掛け、銜轡ふくみぐつわ、紺の手綱を入れてぞ乗りたりける。馬も聞こゆる名馬なり、主も究竟くつきやうの馬乗りにて、伏木ふしき・悪所を嫌はず、差し繰くれてこそ歩ませけれ。




河津祐泰すけやすは秋野を摺り尽くした間々に、引き柿([柿渋かきしぶ=渋柿の青い果実からしぼりとった液。赤褐色で、防腐・防水剤として紙・木などに塗る。を引いた布])の直垂([鎧の下に着る衣])に、斑の行縢([遠行の外出・旅行・狩猟の際に両足の覆いとした布帛ふはくや毛皮の類])の裾をゆったりと履き、鶴の本白([矢羽の一。根元の方が白いもの])で矧いだ白拵え([矢の白篦しらのに白羽を付けた矢])の鹿矢([狩猟に用いる矢])を、筈高([えびらに入れて背負った矢の矢筈が高く現れて見えるように背負う様])に負い、千段籐([千段巻]=[弓の籐の巻き方の一。重籐しげどうの弓の両端の一部を籐で斜め十文字に巻き締めたもの])の弓の真ん中を持ち、萌黄裏(鮮やかな黄緑色の裏)を付けた竹笠を、木枯しに吹きそらせて、宿月毛([赤茶色を帯びた月毛=葦毛でやや赤みを帯びて見えるもの])で太くたくましく、尾髪の短い馬に、梨子地([蒔絵の技法の一。漆の上に金・銀の粉末=梨子地粉。を蒔き、上に透明な漆をかけて平らに研ぎ出し、漆を通して梨子地粉が見えるもの])の白覆輪([銀覆輪]=[器具の周縁をおおう覆輪で、銀または銀色の金属を用いて作るったもの])の鞍に、山吹色の連著の鞦([房を並べ連ねた鞦=馬具の一。馬の尾の下から後輪しづわ)の鞖につなぐ紐])を掛け、銜轡([馬に手綱を付けるため ,馬の口にくわえさせる金具])に、紺の手綱を付けて乗っていました。馬も聞こえる名馬でした、主(河津祐泰)も究竟の馬乗りでしたので、伏木・悪所を嫌わず、難なく歩ませていました。


続く


by santalab | 2015-04-26 08:31 | 曽我物語

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