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Santa Lab's Blog


「曽我物語」斑足王が事(その7)

祐成すけなり、重ねてまうしけるは、「一旦の御心を背き、法師ほふしにならざるは、不孝ふけうににてさうらへども、父母に心ざしの深き事、法師によるべからず、僧俗の形にはよるべからず。時致ときむね、箱根に候ひし時、法華経ほけきやうを一部読み覚え、父の御為に、早や二百六十部読誦す、毎日、六万返の念仏怠らずし、父に回向ゑかうまうすとうけたまはり候へば、
大地だいぢを頂き給ふ堅牢地神けんろうぢじんも、地の重き事はなし。不孝の者の踏む跡、骨髄にとほりて、悲しみ給ふなり。一つは、かの御跡をとぶらひ、一つは、御慈悲を以つて、祐成すけなりに御許し候へかし。父に幼少えうせうより後れ、親しき者は、身貧に候へば、目も懸けず、母ならずして、たれあはれみ給ふべきに、斯様かやうに御心強くましませば、立ち寄る陰もなきままに、乞食こつじきとならん事、不便ふびんに思え候ふぞや」。




祐成が、重ねて申すには、「一旦のお心に背き、五朗(曽我時致ときむね)が法師にならなかったことは、不孝に違いありませんが、父母に心ざしの深いこと、何も法師ばかりではありません。時致が、箱根にいた時、法華経を一部読み覚えて、父(河津祐泰すけやす)のために、二百六十部を読誦しました、毎日、六万返の念仏を怠らず、父に回向([自分が行なった善をめぐらし翻して、他人をも悟りの方向にさしむけること])申したと聞いておりますれば、大地を司る堅牢地神([仏教における天部の神の一柱で大地を司る])も、地を重く思われなかったことでしょう。不孝の者の踏む跡は、骨髄に染みて、憐れんだことでございましょう。一つは、その跡を弔い、一つは、ご慈悲を以って、祐成をお許しくださいませ。父に幼少より後れ、親しい者は、身の貧しさ故、相手にもされず、母以外に、誰が憐れむと申すのです、今のようにお心強く持たれては、立ち寄る陰もなく、乞食となることでしょう、あまりにも不憫に思われませんか」。


続く


by santalab | 2015-04-26 18:33 | 曽我物語

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