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「曽我物語」勘当許す事(その2)

その後、兄弟きやうだいの者ども、畏まりたるを、母、つくづくと守り、いつしかの心地して、「なんぢみづからを愚かにや思ひけん。十郎じふらうがあり所を見するに、五朗ごらうありと言ふ時は、心安し。無しと聞けば、心許なくて、わらはも立ちて見しぞとよ。この三年が程、打ち添はで、恨めしく思はれ、つくづく見るに、直垂ひたたれ衣紋えもん、袴の着際きぎは烏帽子えぼしの座敷に至るまで、父の思ひ出だされ、昔に袖ぞしをれける。さても、五朗は、箱根にても聞きつらん。十郎は、如何にして、経文きやうもんをば知りけるぞや」。祐成すけなりうけたまはりて、「馬痩せて、毛長く、いばゆるに力なし。人ひんにして、智短く、言葉賎し。何に依りてか、たふとくもさうらふべき」。




その後、兄弟(曽我祐成すけなり時致ときむね)の者たちが、畏まっているのを、母は、じっと見守るうちに、かつての心地が蘇りました、「そなたたちは、自らを愚かだと思っているかもしれません。十郎(祐成)の宿所を折々見ていましたが、五朗(時致)がいると申す時は、何も心配しませんでした。いないと聞けば、心配で、わたしも気にしていたのです。この三年の程は、一緒にいませんでしたので、恨めしく思って、何度も見に行きましたが、直垂([鎧の下に着る着物])の衣紋、袴の着際、烏帽子の座敷([着方])に至るまで、そなたたちの父(河津祐泰すけやす)が思い出されて、昔を思い出して袖が萎れていました。それにしても、五朗(時致)は、箱根で聞いておりましょう。十郎(祐成)は、どうして、経文を知っているのですか」と訊ねました。祐成は答えて、「痩せた馬は、毛は長く、いななくに力なし。人は貧しければ、智慧もなく、言葉は賎しいものです。どうして、立派なことが申せましょう」。


続く


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by santalab | 2015-05-01 15:02 | 曽我物語

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