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「曽我物語」勘当許す事(その4)

十郎じふらう、腰より横笛取り出だし、平調ひやうでうに音取り、「如何に如何に、遅し」と責めければ、しばし辞退に及びけるを、十郎、囃し立てて待ちければ、五朗ごらうあふぎを開き、かうこそ謡ひて、舞ひたりけれ。

君が代は 千代に一度 ゐる塵の 白雲斯かる 山と成るまで

と、押しかへし押し返し、三返踏みてぞ舞ひたりける。そのまま、拍子ひやうしを踏み変へて、
別れのことさら 悲しきは 親の別れと 子の歎き
夫婦の思ひ 今兄弟 いづれを思ふべき
袖に余れる 忍び音を
返して止むる 関もがな

と、二返攻めにぞ踏みたりける。




十郎(曽我祐成すけなり)は、腰より横笛を取り出し、平調([西洋音楽のホ短調に相当します])に音を取り、「どうした、早く舞え」と責めました、五朗(曽我時致ときむね)はしばし辞退に及びましたが、十郎が、囃し立てたので、五朗は、扇を開き、歌を謡いながら、舞いました。

君が代が千代に一度積もる塵が、白雲のかかる山となるまで続きますように。

と、繰り返し、三返返して舞いました。そのまま、拍子を変えて、
別れのことさら悲しきは、
親に先立たれること、残された子の悲しみ、
夫婦の思い、
兄弟の嘆き、
どれが劣るともなし。
袖から漏れる忍び音([忍び泣きの声])を止める関があればよいものを。

と、二返返して舞いました。


続く


by santalab | 2015-05-01 17:29 | 曽我物語

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