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「曽我物語」鎌倉殿、箱根御参詣の事(その3)

後陣ごぢんの警固の武士、甲冑かつちうを鎧ひ、弓箭ゆみやを帯する隨兵ずいびやう、上下に番ひ、左右さう帯刀たちはき二行ぎやうに並び、御調度懸おんでうづがけの人、弓手ゆんで馬手めてあひ並ぶ。御迎への伶人れいじんは、伎楽ぎがく調ととのへ、羅綾らりようの袂をひるがへす。御前おんまへの舞人は、鶏婁けいろうを打つて、舞行ぶかうくびすをそばだつ。君の召さるる御船は、大船数多あまた組み合はせ、幔幕まんまくを引き、ぢんの匂ひ、四方よもに満つ。これや、諸仏の弘誓ぐぜいの船も、かくやと思ひ知られたり。さぶらひどもの乗りける船数、百さうに及べり。いづれも、屋形を打ちたりける。無双ぶさうの武具を立て並べ、しづまりかへり、漕ぎ連れたり。




後陣の警固の武士たちは、甲冑を鎧い、弓矢を持った隨兵が、前後に付いて、左右には帯刀が、二列に並び、調度懸([武家で外出の際に、弓矢を持って供をした役。調度持ち])の者どもが、弓手([左])、馬手([右])に並びました。迎えの伶人([雅楽を奏する者])は、伎楽([日本最初の外来楽舞])を調べ、羅綾([高級な美しい衣服])の袂を翻して舞いました。御前の舞人は、鶏婁鼓([雅楽用の楽器。中国から伝来したもので、直径・長さともに約18cmの小形の太鼓。左方=唐楽。の舞人が首から下げて右手のばちで打つ])を打って、舞人は足を上げながら舞いました。君(源頼朝)乗った船には、大船を数多くつなぎ合わせて、幔幕([行事の場所などを他と区別するためまわりを 囲むのに用いられる布製の用具])を引き、沈([沈香])の匂いが、四方に満ちました。これぞ、諸仏の弘誓の船も、このようではないかと思い知られるのでした。侍どもの乗った船は、百艘に及びました。いずれも、屋形を付けていました。無双の武具を立て並べ、鎮まり返って、漕ぎ連れていました。


続く


by santalab | 2015-05-22 09:32 | 曽我物語

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