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「曽我物語」禅師法師が自害の事(その4)

さて、「兄どもが、敵討ちけるをば知らざりけるか」。「おほそれながら、将軍しやうぐんおほせとも存じ候はず。一腹いつぷく一生いつしやうの兄どもが、親の敵討つとて知らせ候はんに、黒衣こくえにて候ふとも、同意せぬ畜生ちくしやうや候ふべき。御推量すいりやうも候へ」とぞまうし上げたりける。「なんぢまなざしを見るに、頼朝に意趣ありと見えたり。事をたづねん為に召しつるに、楚忽そこつの自害、所存の外なり」。「楚忽とは、如何でかうけたまはり候ふ。既に御使ひ賜はりて、召し取れとの御諚ごぢやうを承りて、その用心仕らぬ事や候ふべき。あはれ、兄どもが知らせて候はば、二人の者をば、祐経すけつねに押し向け、愚僧は、一人にて候ふとも、君を一太刀うかがひ奉りて、後生ごしやうの訴へに仕るべきか」とて、御前を睨み、言葉を放ちてぞまうしける。




そして、「兄ども(曽我祐成すけなり時致ときむね)が、敵(工藤祐経すけつね)を討つことを知らなかったのか」。「恐れ多くも、将軍のお言葉とも思えません。一腹一生([同じ父母から生まれた兄弟姉妹])の兄たちが、親(河津祐泰すけやす)の敵を討つと知らせたなら、黒衣の身であろうとも、同意せぬ畜生があるでしょうか。思って見てくださいませ」と申し上げました。「お主の目を見るに、この頼朝に意趣([他人の仕打ちに対する恨み])があるように思えるが。事を訊ねるために呼んだのだ、楚忽([軽はずみなこと])にも自害するとは、思いの外のことぞ」。「楚忽とは、どういうことでございましょう。お使いが参り、捕えよとの御諚([貴人・主君の命令])がございますれば、用心しないことがやりましょうか。ああ、兄たちが知らせてくれたなら、二人の者を、祐経に差し向け、愚僧は、一人なりとも、君(源頼朝)を一太刀隠し持ち、後生の訴えに向かいましたものを」と申して、御前を睨み、言葉を放ちました。


続く


by santalab | 2015-05-22 10:27 | 曽我物語

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