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「曽我物語」禅師法師が自害の事(その6)

御寮れう聞こし召し、この法師ほふしも、兄には劣らざりけり。助け置きなばまた大事を起こすべき者なり。よくぞ召し寄せたりけると思しける。禅師、重ねてまうしけるは、「とても助かるまじき身、刹那せつなの永らへも苦しくさうらふ。急ぎ首を召され候へ」と、しきりに申しければ、生年しやうねん十八にして、つひに斬られにけり。無慙なりし次第なり。君、この者の気色を御覧じて、「かうなる者のそんは、剛なり。あはれ、彼らに世の常の恩を与へ、召し使はば、思ひ止まる事もありなまし。弓矢取る者は、たれ劣るべきにはあらねども、かほどの勇士、天下てんがにあらじ」とおほせも敢へず、御涙をこぼさせ給ひしかば、御前おんまへ祗候しかうさぶらひども、袖を濡らさぬなかりけり。



 

御寮(源頼朝)はこれを聞いて、この法師も、兄(曽我時致ときむね)には劣らぬ。助け置けばまた大事を起こす者となろう。よくぞ召し寄せたと思いました。禅師が、重ねて申すには、「とても助からぬ身、刹那([仏教の時間の概念の一で、最小単位])も世に永らえることが苦しゅうございます。急ぎ首を取られますよう」と、しきりに申したので、生年十八にして、終に斬られました。悲しいことでした。君(源頼朝)は、この者の姿勢を見て、「剛の者(伊東祐親すけちか)の孫は、剛であることよ。ああ、彼らに世の者と同じく恩を与え、召し使っておれば、思い止まることもあったであろう。弓矢取る者は、誰が劣るともないが、これほどの勇士は、天下にないものを」と申しも敢えず、涙をこぼしたので、御前に祗候する侍どもも、袖を濡らさぬ者はありませんでした。


続く


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by santalab | 2015-05-22 10:37 | 曽我物語

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