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Santa Lab's Blog


「曽我物語」呉越の戦ひの事(その16)

にや、昨日きのふまでは、越国ゑつこく大王だいわうとして、何か心をたづさへし。弓矢を帯する身とて、今日けふは、斯かる目に遭ふべしとは、誰か知るべきとて、涙を流さぬはなかりけり。越王ゑつわう、かの所に入りぬれば、手械てがせ足枷あしがせを入れ、首に綱を差し、土のろうにぞ込められける。夜明け、日暮るれども、日月の光をも見ず、冥暗の内に、年月を送り迎へし涙の露、さこそは袖に積もるらめ、思ひ遣られてあはれなり。




まこと、昨日までは、越国の大王として、何の心配もありませんでした。弓矢を帯する身となって、今日は、かかる目に遭うとは、誰が知るところかと、涙を流さぬ者はありませんでした。越王(勾踐こうせん)は、枯蘇城(現江蘇省蘇州市姑蘇区)に入ると、手械([囚人などの手にはめてその自由を奪う刑具])足枷をされて、首に綱を付け、土籠に籠められました。夜が明け、日が暮れようとも、日月の光をも見ず、冥暗の内に、年月を送り迎える涙の露が、さぞや袖に積もったことでしょう、思い遣られて哀れでした。


続く


by santalab | 2015-06-21 18:35 | 曽我物語

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