Santa Lab's Blog


「曽我物語」奈良の勤操僧正の事(その1)

これや、延暦えんりやく年中ねんぢゆうに、奈良の勤操ごんざう僧正そうじやう大旱魃だいかんばつに、雨の祈りの為、大和の国布留ふるの社にて、薬草喩品やくさうゆぼんを一七日かうぜられける。いづくともなく、わらは一人来たりて、毎日、御きやう聴聞ちやうもんしける。七日に満ずる時、「何者にや」と、御たづねありければ、「我は、この山の小竜せうりゆうなり。七日の聴聞に依つて、安楽世界に生まれさうらひなん嬉しさよ」とて、随喜の涙を流しけり。その時、僧正いはく、「竜は、雨を心に任するものなれば、雨を降らしさうらへ」とのたまへば、「大龍の許しなくして、我が計らひにて、成り難く候へども、さりながら、後生ごしやう菩提を御助け給ひ候はば、身は失せ候ふとも、雨を降らし候はん」とまうす。




これは、延暦年中(782~806)に、奈良の勤操僧正(三論宗の僧だったらしい)、大旱魃(延暦十七年(798)のことらしい)に、雨の祈りのため、大和国布留の社(現奈良県天理市にある石上いそのかみ神宮)にて、薬草喩品(『法華経』の第五品)を七日間講じられました。どこからともなく、童が一人やって来て、毎日、経を聴聞していました。七日目の満願の日、「何者か」と、訊ねると、「わたしは、この山の小竜です。七日の聴聞によって、安楽世界([極楽浄土])に生まれ変わることができると思えばうれしいのです」と言って、随喜の涙を流しました。その時、僧正が申すには、「竜は、雨を自在に操るという、どうか雨を降らしてほしい」と申せば、「大龍の許しなくして、わたしのが勝手に、雨を降らせることは難しいことですが、とは言え、後生菩提([来世に極楽に生まれて、悟りを開くこと])をお助けいただいたからには、身は失せるとも、雨を降らして差し上げましょう」と答えました。


続く


[PR]
by santalab | 2015-06-25 19:56 | 曽我物語 | Comments(0)

<< 「曽我物語」奈良の勤操僧正の事...      「曽我物語」伊東が斬らるる事 >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧