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「曽我物語」呉越の戦ひの事(その20)

勾踐こうせん、これを聞き給ひ、「我、会稽山くわいけいざんに囲まれ、既に誅せらるべかりしを、今まで助け置かれて、天下てんがの赦を待つ事、偏へに君王くんわう厚恩かうおんなり。今、我、これを以つて報ぜずは、いつの日をか期せん」とて、秘かに石淋せきりんの取りて舐め、そのあぢはひを医師に告げければ、医師すなはち味はひを聞きて、療治りやうぢくはふるに、呉王ごわうの病ひ、忽ちに平癒へいゆうす。呉王、おほきに喜びて、「人、心あり、死を助けずは、如何でか今謝心あらん」とて、越王ゑつわうを土の籠より出だし、剰へゑつの国を与へ、「本国ほんごくかへし給ふべし」と宣下せんげせられけり。




勾踐は、これを聞いて、「わたしは、会稽山で包囲されて、誅せられるところでしたが、今まで助け置かれて、天下の赦しを待つ身です、ひとえに君王(夫差ふさ)の厚恩あってのことです。今、わたしが、これを以って報いなければ、いったいいつ報いるべき」と申して、秘かに石淋([結石])を舐め、その味を医師に知らせると、医師はすぐに味を聞いて、治療しました、呉王(夫差)の病いは、たちまち平癒しました。呉王は、たいそうよろこんで、「勾踐は、心ある者よ、死を助けなければ、謝心を示せぬ」と申して、越王(勾踐こうせん)を土籠より出して、その上越国を与え、「本国に返す」と宣下しました。


続く


by santalab | 2015-06-26 21:10 | 曽我物語

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