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「曽我物語」奈良の勤操僧正の事(その3)

伊東の入道にふだうは、最期の時にも、後生ごしやう菩提を願はぬぞ、愚かなる。これを以つて、過ぎにし事を案ずるに、親のゆづりを背くのみならず、現在の兄を調伏てうぶくし、持つまじき所領しよりやう横領わうりやうせしゆゑ、天これを戒めけるとぞ思えたり。しかれば、悪は一旦の事なり、小利せうりありといへども、つひにはしやうに帰して、道理だうり道を行くとかや。総じて、頼朝に敵したる者こそおほき中に、まのあたりに誅せられける、因果いんぐわ逃れざることわりを思へば、昔、天竺てんぢく大王だいわうあり、尊き上人しやうにんを帰依せんとて、国々をたづねけるに、ある時、いみじき上人ありとて、迎ひを遣はし給ふに、このわう朝夕あさゆふ、碁を好み給ひて、人を集めて打ち給ふ。




伊東入道(伊東祐親すけちか)は、最期の時も、後生菩提([来世に極楽に生まれ変わること])を願わなかったのは、愚かなことでした。これをもって、過ぎた昔のことを思えば、親の遺言に背いたばかりでなく、兄(伊東祐継すけつぐ)を調伏し、持つはずもない所領を横領したために、天がこれを戒めたと思えました。なれば、悪は一旦の事、小利ありといえども、終には正(正義)に帰して、道理に従うと申すとか。詰まるところ、頼朝に敵する者こそ多くあった中に、まのあたりに誅せられける、因果を逃れることのなかった道理を思えば、昔、天竺に大王がいて、尊い上人に帰依しようと、国々を探していましたが、ある時、りっぱな上人がいると聞き、迎えを遣わしました、この王は、朝夕、碁を好んで、人を集めて碁を打っていました。


続く


by santalab | 2015-06-27 08:47 | 曽我物語

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