人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「曽我物語」貞女が事(その2)

わう御覧じて、押し止め置き給ふ。かんはく、安からずに思ひけれども、適はず。をんなも、王宮わうくうの住まひ、物憂くて、ただをとこの事のみ、思ひ歎きければ、わう、驚き思し召す。時の関白くわんばくりやうはくと言ふ者を召し、「この事いかがせん」と問ひ給ふ。「らば、彼がをとこのかんはくを、片輪かたはになして見せ給へ。思ひは冷めぬべし」とまうしたりければ、「然るべし」とて、耳鼻を削ぎ、口を裂きて見せ給ふ。をんな、我ゆゑ、斯かる憂き目に遭ふよと歎き、いよいよ伏ししづみ悲しみければ、また臣下に問ひ給ふ。「らば、かんはくを殺して見せ給へ」と申しければ、やがて、深き淵にしづめられけり。




王は女を見て、女を王宮に置きました。かんはく(韓憑?)は、安からず思いましたが、どうすることもできませんでした。女は、王宮での暮らしを、悲しんで、ただ男のことばかり、思い嘆くので、王は、驚きました。時の関白りやうはく(梁伯)と言う者を召し、「どうしたものか」と訊ねました。「ならば、男のかんはくを、片輪にしてはどうでしょう。きっと思いは冷めることでしょう」と申せば、「ならば」と申して、耳鼻を削ぎ、口を裂きました。女は、わたしのために、このような憂き目に遭ったのだと嘆き、ますます伏し沈み悲しんだので、また臣下に訊ねました。「ならば、かんはくを殺してしまいなさいませ」と申せば、やがて、深き淵に沈めました。


続く


by santalab | 2015-06-28 11:33 | 曽我物語

<< 「曽我物語」貞女が事(その3)      「曽我物語」貞女が事(その1) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧