Santa Lab's Blog


「曽我物語」館館にて咎められし事(その1)

ここに、座間ざんまと本間と、やかた数十間すじつけん、向かひ合ひてぞ打ちたりける。かの両人りやうにん郎等らうどうかがり数多あまた所に焚かせ、木戸をひ重ね、辻を固め、とほるべき様こそなかりけれ。いかがせんと休らふを見て、「何者ぞや。これほどに夜更けて通るは。殊にそのてい事がましく出で立ちたり。怪しや。通すまじ」とぞ咎めける。「苦しからぬ者なり。これも用心の形、人をこそ咎むべけれ」。「いや、誰にてもましませ。五つ以後の通ひ、叶ふべからずとの御おきてなり。通すまじき」とぞ支へける。十郎じふらう打ち向かひて、「御咎めあるまじきものなり。これは、土屋殿より愛甲あいきやう殿への御使ひなり。通し給へ」と言ひければ、「さらば通せ」と許しけり。




ここに、座間([居間])と本間と、館が数十間、向かい合ってひしめいていました。かの両人の郎等([家来])が、篝火を数多く焚き、木戸を閉じ、辻を固く護っていたので、とても通ることができるようには思えませんでした。どうしたものかと立ち止まっていると、「何者ぞ。これほどに夜更けて通るのは。その出で立ちも仰々しいぞ。怪しいぞ。通すことはできぬ」と咎めける。「苦しからぬ者です。これも用心のため、我らは怪しい者ではございません」。「いや、誰であろうと通せぬ。五つ([午後八時頃])以後の通いは、ならぬとの決まりぞ。通すまい」と防ぎました。十郎(曽我祐成すけなり)は打ち向かい、「咎められるような者ではありません。我らは、土屋殿(土屋宗遠むねとほ)より愛甲殿(愛甲季隆すゑたか)への使いです。通されよ」と申せば、「ならば通れ」と許しました。


続く


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by santalab | 2015-07-10 08:10 | 曽我物語

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