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Santa Lab's Blog


「曽我物語」眉間尺が事(その1)

この心にて、古きを思へば、昔、大国に、しやう大王だいわうあり。后数多あまた持ち給ふ中に、とうやう夫人ぶにんまうす后、御身つねづね劣りければ、くろがねの柱に睦れつつ、御身を冷やしけるが、ほどなく、懐妊くわいにんし給ひける。大王聞き給へて、くらひを譲るべき王子わうじもなかりつるに、誕生たんじやう成り給はん事よと、喜び給ひけれども、三年まで、生まれ給はず。大王、不思議に思し召し、博士を召し、御たづねありければ、「まことに、君の御宝を生み給ふべし。さりながら、人にてはあるべからず」とまうす。「何物なるべき」と、覚束無くて待ち給ふところに、博士の申す如く、人にてはあらで、鉄の丸かせを生み給ひけり。大王これを取り、莫邪ばくやを召し、つるぎに作らせ給ひければ、光世に越え、しるしあらたなる名剣にてありける。大王賞玩しやうくはんし、昼夜ちうや身を離し給ふ事なし。




筥王の気持ちを、古きに尋ねれば、昔、大国に、楚しやう大王(楚商大王?)がいました。后は数多くいましたがその中に、とうやう夫人と申す后は、姿かたちが劣っていたので、いつも鉄の柱を抱いて、身を冷やしていましたが、ほどなく、懐妊しました。大王は聞いて、位を譲る皇子はいませんでしたので、誕生するかと、喜びましたが、三年たっても、生まれませんでした。大王は、不思議に思い、博士を召し、訊ねると、「まことに、君の宝をお生みになられます。けれども、人ではございません」と申しました。「何物であろうか」と、不安に思いながら待っていましたが、博士が申した通り、人ではなく、鉄の丸かせ([丸かし]=[塊])を生みました。大王はこれを受け取ると、莫邪(鍛冶の名)を召し、剣を作らせました、その輝きは世に越え、霊験あらたかな名剣でした。大王は賞玩([大切にすること])し、昼夜身を離すことはありませんでした。


続く


by santalab | 2015-07-11 10:39 | 曽我物語

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