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「曽我物語」波斯匿王の事(その1)

そもそも、富楼那ふるな弁舌べんぜつにて、くわうの怒りを止めける来歴をたづぬるに、昔、釈尊、霊山りやうぜんにてほふを説き給ひしに、波斯匿王はしのくわう聞法ききほふ結縁けちえんの為に、まゐらせられたり。富楼那尊者ふるなそんじやまうすは、弁舌べんぜつ第一の仏弟子にてましましけり。しかれども、 かのくわうの臣下の子なり。教法けうぼふに心を染めて、くわうの方をだに見遣り給はざりける。くわう、怒りをなしていはく、「さても、尊者は、 みづから仏前にありつるを、つひにそれとだにも見られざりつる奇怪きくわいさよ。この度、まゐらむ時は、その色見すべし」とて、幸臣かうしんあひ具し、怨敵おんできを含みて、まゐられける時、富楼那尊者ふるなそんじやは、路中にて行き合ひ給ひ、「如何に尊者、いづくへ」と問ふ。




そもそも、富楼那([釈迦十大弟子の一人。 説法第一。 十大弟子中では最古参。大勢いた弟子達の中でも、弁舌に優れていたとされる])の弁舌により、くわう(波斯匿王。古代インドに栄えたコーサラ国の王)の怒りを止めた来歴([由来])は、昔、釈尊(釈迦)が、霊山([霊鷲山りやうじゆせん]=[インドのビハール州のほぼ中央に位置する山。釈迦仏が無量寿経や法華経を説いたとされる山])で法を説かれた時、波斯匿王は、聞法結縁のために、参りました。富楼那尊者と申すは、弁舌第一の仏弟子でした。とはいえ、かの匿王の臣下の子でもありました。教法に熱中し、匿王に気が付きませんでした。匿王が、怒り申すには、「どうして、尊者は、このわしが仏前にいたのに、遂にわしとも気付かなかったわしを馬鹿にしておるのか。今度、参る時は、わしの怒りを見せようぞ」と申して、幸臣([気に入りの家来。寵臣])を数連れて、恨みを含んで、参る時、富楼那尊者と、路中で行き合いました、「尊者よ、どこへ向かうておるのじゃ」と訊ねました。


続く


by santalab | 2015-07-17 09:23 | 曽我物語

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