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「曽我物語」弁才天の御事(その7)

城中じやうちゆうには、しづまりかへりて、音もせず。されども、用心厳しくて、容易く入るべきやうはなかりけり。時を移して、ゆらへたる。かのふん女は、同じく福者と言ひながら、三宝さんぼうを崇め、仁義を乱らで、言ふ計りなき賢人なり。如何でかしるしなかるべき。諸天、これをあはれみて、ふん女を渇仰かつがうし給ひける。かくては、いかがあるべきとて、死生ししやう不知の外道げだうども、をめき叫びて、乱れ入る時に、悪魔降伏がうぶく四天してん・十二天、影向やうがう成りて、四角四方しはうを守り給ふ。四天は、もとより甲冑かつちうを鎧ひ、弓箭きゆうせんを放さぬ勇士なれば、面も振らで、支へ給ふ。火天くわてん猛火みやうくわを放し、風天、風を吹かせ、各々じやうを守り給ふ。中にも、水天は、弓矢を守らんと誓ひ給ふなれば、数の眷属けんぞくを引き連れ、妙観めうくわんみつちの旗差させ、殊に進みて見え給ふ。




城中は、鎮まり返って、音もしませんでした。けれども、用心厳しくて、容易く入ることはできそうにありませんでした。賊たちは時を移して、ためらっていました。ふん女は、福者([裕福な者])と言いながら、三宝([仏・法・僧])を崇め、仁義を乱らず、言い尽くせないほどの賢人でした。どうして霊験のないことがありましょう。諸天は、憐れんで、ふん女を渇仰([心からあこがれ慕うこと])していました。このままでは、どうにもならないと、死生不知([命知らず])の外道どもが、喚き叫んで、乱れ入る時、悪魔降伏の四天([持国天・増長天・広目天・多聞天 ])・十二天([密教における方位の神々])は、影向([神仏が仮の姿をとって現れること])して、四角四方を守りました。四天は、もとより甲冑を鎧い、弓箭を放さぬ勇士でしたので、恐れも知らず、守りました。火天は、猛火を放ち、風天は、風を吹かせ、各々城を守りました。中でも、水天は、弓矢(武士)の守り神でしたので、数ある眷属([神の使者])を引き連れ、妙観みつち([妙観察智]=[すばらしい事実を洞察・観察する智慧])の旗を差し、とりわけ前を進みました。


続く


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by santalab | 2015-07-18 11:29 | 曽我物語

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