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「曽我物語」弁才天の御事(その27)

まことや、この者父河津かはづ三郎さぶらうは、東八箇国はつかこくに聞こゆる俣野の五郎ごらうに、片手を放ちて、相撲すまふに三番勝ちてこそ、大力だいりきの覚えは取りたりしが、その子なるをや、力比べは敵ふまじ、すかさんものをと打ち笑ひ、「これへこれへ」としやうずれば、「余りの辞退はいこく人、異体いていは御免さうらへ」と言ふ言ふ、座敷に出でけるが、持ちたる太刀と草摺くさずりにて、末座ばつざなる人々の首まはり、側顔そばかほを打ちなぐり、差し越え差し越え行き過ぎて、朝比奈あさいなが下なる畳になほりける、座敷に余りて見えたり。朝比奈、急ぎ座敷を立ちて、義盛よしもりの前にありけるさかづき五朗ごらうまへにぞ置きたりける。




たしか、この者の父河津三郎(河津祐泰すけやす)は、東八箇国に聞こえる俣野五郎(俣野景久かげひさ)に、片手を放って、相撲に三番勝って、大力の名を取った者、その子ならば、力比べは敵うまい。ここはおだてておこうと打ち笑い、「これへこれへ」と招きました、五朗(曽我時致ときむね)は「余りの辞退は無礼、異体([形や体裁が普通と違うこと])はご免くだされ」と言いながら、座敷に出ました、太刀を佩き草摺([甲冑の胴の裾に垂れ、下半身を防御する部分])姿のまま、末座の者の狭い所を、側顔([横顔])にぶつかりながら、差し越え差し越え過ぎて、朝比奈(朝比奈義秀よしひで)の下座の畳に座りました、座敷を圧倒しました、朝比奈(義秀)は、急ぎ座敷を立って、義盛(和田義盛。義秀の父)の前にあった盃を五朗(時致)の前に置きました。


続く


by santalab | 2015-07-19 11:28 | 曽我物語

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