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「曽我物語」小二郎語らひ得ざる事(その1)

たれにや」と問ふ。「きやう小二郎こじらうとて、河津殿かわづどの在京ざいきやうの時、人にあひ馴れて、まうけ給ふ子なり。かれを呼び寄せて、語らはん」と言ひければ、五朗ごらう聞きて、「よくよく御ためらひさうらへ。一腹一生いつしやうの兄ならば、如何に臆病おくびやうに候ふとも、罪科ざいくわ逃れ難くて、同意すべし。かれは、べちの事。如何で左右さうなく、大事をおほせ出だされん。をさまり難く思え候ふ。御契約には過ぐべからず候へども、もし聞き入れずは、わろき事や出で来なん。橘は、淮北わいほくしやうじて、枳殻からたちと成り、水土すいどの事なればなり。隔てのあれば、兄弟きやうだいなりとも、心を置くべきものをや」と言ひければ、




五朗(曽我時致ときむね)は「誰ですか」と訊ねました。「京の小二郎と言って、河津殿(河津祐泰すけやす)が在京の時、人に情けをかけて、設けた子よ。かれを呼び寄せて、仲間に入れようではないか」と申せば、五朗(時致)はこれを聞いて、「よくよくお考えください。一腹一生の兄ならば、どれほど臆病であろうと、罪科逃れ難くて、同意するでしょう。かれは、別腹です。どうしてためらいなしに、大事を申そうとするのですか。納得できません。契約に過ぎぬことではありますが、もし聞き入れない時には、悪いことが起こるやも知れません。橘は、淮北(中国安徽あんき省)に生じて、枳殻([ミカン科。原産地は長江上流域])となりましたが、水土([水と土])があればこそ。隔てあれば、たとえ兄弟であっても、用心すべきではありませんか」と申しました、


続く


by santalab | 2015-07-21 16:43 | 曽我物語

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