Santa Lab's Blog


「曽我物語」曽我にて虎が名残り惜しみし事(その12)

なほしも、虎は打ち伏して、消え入るやうに見えしかば、十郎じふらう、かれを諌めんとて、「いとままうして、祐成すけなりは、後生ごしやうにてまゐり合はん」とて驚かせば、起きなほりたるばかりにて、物言ふまではなかりけり。今を限りの別れなり。後の世までの形見とて、十郎着たりける目結めゆひの小袖に、虎が紅梅の小袖に着替へて、「心のあらば、移り香よ、しばし残りて、憂き別れ、慰むほども、面影の、着替へし衣に留まれかし。互ひの名残り尽きせず」と、また諸共に打ち伏しぬ。




なおも、虎御前は伏して、まるで消え入る様でした、十郎(曽我祐成)は、虎御前に言い聞かせるように、「今生の別れを申す、この祐成だが、後生にてそなたと再び巡り会おう」と申して溜息をつけば、虎御前はとっさに起き上がりましたが、言葉も出ませんでした。まさに今を限りの別れと覚悟するほかありませんでした。後の世までの形見と思って、十郎(祐成)が着ていた目結([古代の染め方の一種である纐纈こうけつ染め])の小袖と、虎御前の紅梅の小袖に取り替えて、「心あるならば、移り香よ、しばし残り、悲しき別れの、一抹の慰めとして、その面影を、着替えた衣に留まっておくれ。お互いの名残りは尽きずとも」とつぶやいて、またともに打ち伏しました。


続く


[PR]
by santalab | 2015-09-13 10:05 | 曽我物語 | Comments(0)

<< 「曽我物語」曽我にて虎が名残り...      「曽我物語」曽我にて虎が名残り... >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧