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「曽我物語」富士野の狩場への事(その10)

景季かげすゑも、まさしく射つるものをとて見れば、にも矢目は一つならではなかりけり。さりながら、抑へて取らるるものならば、時の恥辱に思ひければ、源太げんだおほきに怒りをなし、「勢子せこの奴ばらはなきか。寄りてこの鹿しし取れ」。重保しげやすも、駒打ち寄せ、「雑人ざふにんはなきか。重保が留めたる鹿しし皮裁かはたて」。源太も、る者なりければ、少しもひるむ気色はなし。「臆したる奴ばらかな。景季が留めたる鹿の皮裁て、舁きて取れ」。重保、らぬていにて、駒駆けまはし、「雑色ざふしきどもは、など鹿をば取らぬぞ」と、早や事実なる詰論つめろんなり。




景季(梶原景季)も、確かに射抜いたと見れば、やはり矢目は一つではありませんでした。このまま、無理に取られたのでは、恥になると思い、源太(景季)は、大声を上げて、「勢子([狩猟の場で、鳥獣を追い出し たり、他へ逃げるのを防いだりする役目の者])の奴どもはおらぬか。早くこの鹿を取れ」。重保も、駒打ち寄せ、「雑人([下賤の者])はおらぬか。重保が仕留めた鹿の皮を剥げ」。源太(景季)も、勇ましい者でしたので、少しもひるむ様子はありませんでした。「何を怖じ気付いておるのだ。早くこの景季が仕留めた鹿の皮を剥げ、担いで運べ」。重保も、聞こえぬ体で、駒を駆け回し、「雑色どもは、何故鹿を取らぬか」と、言い争いが起こりました。


続く


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by santalab | 2015-09-28 08:39 | 曽我物語 | Comments(0)

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