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「増鏡」烟の末々(その20)

鳥羽殿も、近頃はいたう荒れて、池も水草がちに埋もれたりつるを、いみじう修理し磨かせ給ひて、はじめて御幸なりし時、「池のほとりの松」と言ふ事講ぜられしに、太政大臣おほきおとど、序を書き給へりき。「夫鳥羽、仙洞三五累聖、離宮一百余載」とかや。また、御身のいみじき事には、「蓬の髪霜寒くて七代に伝へたり」と侍りしこそめでたけれ。

祝ひおく 始めと今日を 松が枝の 千年の影に 澄める池水

院の御製ぎよせい
影うつす 松にも千代の 色見えて 今日すみそむる やどの池水




鳥羽殿(現京都市伏見区鳥羽にあった第七十二代白河、第七十四代鳥羽両上皇の離宮)も、この頃はたいそう荒れて、池も水草で埋もれておりましたが、後嵯峨院(第八十八代天皇)が修理し磨かれて、はじめて御幸になられた時、「池の辺の松」という題を命じられて、太政大臣(西園寺実氏さねうぢ)が序を書かれました。「鳥羽天皇より、仙洞([院御所])は十五代を経て、離宮は百歳余り」とかでございましたか。また、大臣自身のことを、「蓬の髪([ほつれ乱れた髪])が白くなるまで七代の帝にお仕えしました」と詠まれましたが名誉なことでございました。

祝いはじめの日でございますれば、松が枝も千年の影を、澄んだ池水に映しておりまする。

後嵯峨院の御製([天皇や皇帝、また皇族が手ずから書いたり作ったりした文章])、
松の千代変わらぬ色を映すそうと、今日の池水はとりわけ澄んでいるようではないか。


続く


by santalab | 2015-11-08 09:53 | 増鏡

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