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「増鏡」烟の末々(その30)

院の上、鳥羽殿におはします頃、神無月かみなづきの十日頃、朝覲てうきんの行幸し給ふ。世にある限りの上達部・殿上人仕うまつる。色々の菊・紅葉もみぢき混ぜて、いみじう面白し。女院もおはしませば、拝し奉り給ふを、太政大臣おほきおとど見奉り給ふに、喜びの涙ぞ人わろきほどなる。

例なき 我が身よいかに 年たけて かかるみゆきに 今日仕へつる



院の上(第八十八代後嵯峨院)が、鳥羽殿([現京都市伏見区鳥羽にあった離宮])におられた頃のことでございますが、神無月([陰暦十月])の十日頃、後深草天皇(第八十九代天皇)の朝覲([天皇が父母もしくはそれに準じる太上天皇・女院に拝礼すること])の行幸がございました。世にある限りの上達部・殿上人がお供いたしました。色々の菊([表は白,裏は蘇芳すはう=紫がかった赤色。裏は青・紫も。秋に着用])・紅葉([表は紅、裏は青。表は赤、裏は濃い赤とも])を取り混ぜて、たいそう華やかでございました。女院(體子たいし内親王=神仙門院。第八十六代後堀河天皇の第二皇女)もおられたので、参拝がございましたが、太政大臣(西園寺実氏さねうぢ)が女院を見られて、よろこびの涙をみっともないほど流されました。

我が身の年もたいそう長けて、女院とお会いする御幸にお供仕るとは、例のないほどに名誉なことでございます。


続く


by santalab | 2015-11-20 06:34 | 増鏡

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