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「曽我物語」富士野の狩場への事(その25)

さて、兄弟きやうだいは、見え隠れに連れつ離れつ、心を尽くし狙ひけるこそ、無慙なれ。十郎じふらうがその日の装束しやうぞくには、萌黄匂もえぎにほひの裏打ちたる竹笠、村千鳥の直垂ひたたれに、夏毛の行縢むかばき脇深く引き込うで、鷹護田鳥斑うすべう鹿矢ししや筈高はづだかに取つて付け、重籐しげどうの弓の真ん中取り、葦毛あしげなる馬に、貝鞍かひくら置きてぞ乗りたりけり。




さて、兄弟(曽我祐成すけなり時致ときむね)は、見え隠れ連れ離れ、一心に工藤祐経すけつねを狙っていました、憐れなことでした。十郎(祐成)のその日の装束には、萌黄匂い([上 から下へしだいに萌葱色を薄くしたもの])の裏打ちした竹笠([竹を網代あじろに編んで作った笠])、村千鳥([群千鳥文]=[千鳥が群れて飛ぶさまを文様化したもの])の直垂([衣])に、夏毛([ 鹿の夏の毛。夏の半ばを過ぎて黄色になり、白い斑点がはっきり浮き出たもの。毛皮で行縢を作った])の行縢([旅行や狩りなどの際に足をおおった布また革])を深く引き込んで、鷹護田鳥斑([羽根の先が白く、元に薄黒い斑点のある尾白鷲の尾羽])の鹿矢([狩猟用の矢])を、筈高([えびら)に入れて背負った矢の矢筈が高く現れて見えるように背負う様])に取り付け、重籐弓([弓のつかを籐で密に巻いたもの])を真ん中に取り、葦毛の馬に、貝鞍([鞍橋くらぼねの表面に、夜光貝や青貝で文様を刻んではめ込み、漆を塗って研ぎ出したもの])を置いて乗っていました。


続く


by santalab | 2015-11-27 06:40 | 曽我物語

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