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「曽我物語」富士野の狩場への事(その29)

五朗ごらうも、同じく中差し取りて番ひ、左衛門さゑもんじようが首の骨に目を懸け、大磐石だいばんじやくを重ねたりと言ふとも、などか斬つて捨てざらんと、鞭にあぶみをも見添へて、馬手めてあひ付け馳せ並べ、三つある鹿と左衛門さゑもんを真ん中に取り込め、矢先を左衛門に差し当てて、引かんとするところに、祐経がしばしの運や残りけん、祐成すけなりが乗りたる馬を、思はぬ伏し木に乗り掛けて、真逆様まつさかさまに転びけり。過たず弓の本を越して、むまかしらに下り立つたり。五朗ごらうは、これを知らずして、矢筈はづを取り立ち上がりける。兄の有様一目見て、目も暮れ、心も消えにけり。




五朗(曽我時致ときむね)も、同じく中差し([征矢])を取って番い、左衛門尉(工藤祐経すけつね)の首の骨に狙いを定め、たとえ大磐石を重ねたといえども、どうして斬って捨てることができないことがあろうかと、鞭に鐙を添えて、馬手([右手])に付けて馬を馳せ並べ、三頭の鹿と左衛門(祐経)を真ん中に取り込め、矢先を左衛門に向けて、矢を引こうとした時、祐経に少しの運が残っていたのか、祐成(曽我祐成)の乗った馬が、思わず伏し木に乗り掛けて、真逆様に転んでしまいました。祐成は弓の本を突いて、馬の頭に下り立ちました。五朗は、これに気付きませんでした、矢筈([矢の一端の弦にかける部分])を番い馬上で立ち上がりました。その時兄(祐成)の姿を一目見て、目も暮れ、気力をなくしてしまいました。


続く


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by santalab | 2015-12-01 08:23 | 曽我物語

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