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「太平記」持明院殿御即位事付仙洞事(その3)

されども主上しゆしやうも上皇も、この明清このあききよ勘文かんもん御心に叶ひてげにもと被思召ければ、今年大甞会だいじやうゑを可被行とて武家へ院宣ゐんぜんを被成下。武家これを施行しかうして、国々へ大甞会米だいじやうゑまいを宛ておほせて、不日に責めはたる。近年は天下てんがの兵乱打ち続いて、国つひえ民苦しめるところに、君の御位つねに替はつて、大礼止む時なかりしかば、人の歎きのみあつて、いささかもこれこそ仁政なれと思ふ事もなし。されば事騒がしの大甞会や、今年はなくてもありなんと、世皆くちびるひるがへせり。




けれども主上(北朝第三代、崇光天皇)も上皇(北朝初代、光厳くわうごん天皇)も、明清の勘文([吉凶の占いなどによった判断・意見を記した文書])が意に適うものでしたので、今年大嘗会([大嘗祭]=[天皇が即位後初めて行う新嘗祭。その年の新穀を天皇が天照大神および天神地祇に供え、自らも食する、一代一度の大祭])を行うと武家へ院宣を下されました。武家はこれをもって、国々へ大嘗会米([段銭]=[税])を課し、日を置かず取り立てました。近年は天下に兵乱が打ち続いて、国は疲弊し人民が苦しむところに、君の位は度々替わって、大礼が止む時もありませんでした、人の嘆きばかりあって、わずかも仁政とは思いませんでした。ならば事穏やかならぬ大嘗会を、今年は行わなくともよいものをと、世の人は皆脣を翻えして非難しました。


by santalab | 2015-12-20 10:56 | 太平記

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