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「太平記」立后事付三位殿御局事(その3)

これより君王くんわう朝政あさまつりごとをし給はず。忽ちに准后の宣旨を下されしかば、人皆皇后元妃げんひの思ひをなせり。驚き見る、光彩くわうさいの始めて門戸もんこることを。この時天の人、なんを生む事をかろんじて、ぢよを生む事を重んぜり。されば御前おんまへ評定ひやうぢやう、雑訴の御沙汰までも、准后じゆごう御口入ごこうじゆとだに云ひてげれば、上卿しやうきやうも忠なきにしやうを与へ、奉行ぶぎやうも理あるを非とせり。関雎くわんしよは楽しんで不淫、哀しんで不傷。詩人採つて后妃の徳とす。いかんかせん、傾城傾国の乱今にありぬと思えて、浅ましかりし事どもなり。




こうして君王(第九十六代後醍醐天皇)は朝政をしなくなりました。たちまちに准后の宣旨を下されたので、人は皆皇后元妃([天子・君主の正妻。皇后。正妃])のように思いました。人は驚いて、光彩([繁栄すること])がはじめて門戸に生るということを知りました。この時天人([都の人])は、男を生むことを軽んじて、女を生むことを重んじるようになりました。そして御前の評定、雑訴の沙汰までも、准后のご口入と申せば、上卿も忠なしに賞を与え、奉行も理ある者を罪としました。関雎([夫婦仲がよくて礼儀正しいこと])は楽しみあって淫せず、悲しみに傷付かず。詩人はこれを后妃の徳としました。どうしたことか、傾城傾国の乱が今に起こると思えて、浅ましいことに思われました。


続く


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by santalab | 2016-01-05 13:10 | 太平記 | Comments(0)

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