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「太平記」備後三郎高徳事付呉越軍の事(その18)

范蠡はんれい聞之、「時すでに到りぬ」と悦うで、みづか二十万騎にじふまんぎの兵を率して、呉国へぞ押し寄せける。呉王夫差ふさ折節をりふししんの国呉をそむくと聞いて、晋国へ被向たる隙なりければ、防ぐつはもの一人いちにんもなし。范蠡先づ西施を取りかへして越王ゑつわうの宮へかへし入れ奉り、姑蘇台こそだいを焼き払ふ。せい両国りやうごく越王ゑつわうに心ざしを通ぜしかば、三十万騎を出だして范蠡に戮力。呉王聞之先づ晋国の戦ひを差し置いて、呉国へ引つかへし、越に戦ひを挑まんとすれば、まへには呉・ゑつせいつはもの如雲霞の、待ち懸けたり。後ろにはまた晋国の強敵がうてき乗勝追つ懸けたり。呉王大敵に前後を包まれて可遁方もなかりければ、軽死戦ふ事三日三夜、范蠡新手あらてを入れ替へて不継息攻めける間、呉の兵三万余人討たれてわづかに百騎に成りにけり。




范蠡(中国春秋時代の越の政治家、軍人)はこれを聞いて、「時すでに到った」とよろこんで、自ら二十万騎の兵を率して、呉国に押し寄せました。呉王夫差はちょうど晋国が呉に背いたと聞いて、晋国に向かていましたので、防ぐ兵は一人も残っていませんでした。范蠡はまず西施を取り返して越王(勾践)の宮へ帰すと、姑蘇台(姑蘇城。現江蘇省蘇州市)を焼き払いました。斉・楚両国も越王に心ざしを通じていたので、三十万騎を出して范蠡に力を合わせました。呉王はこれを聞くとまずは晋国の戦いを差し置いて、呉国へ引き返し、越と戦いを挑もうとしましたが、前には呉・越・斉・楚の兵が雲霞の如く、待ち構えていました。後ろにはまた晋国の強敵が勝つに乗って追いかけてきました。呉王大敵に前後を囲まれて遁れる方もありませんでしたので、死を軽んじて戦うこと三日三夜、一方范蠡は新手を入れ替えて息も継がせず攻めたので、呉の兵三万余人は討たれてわずかに百騎になりました。


続く


by santalab | 2016-01-30 07:32 | 太平記

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