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「太平記」将軍都落事付薬師丸帰京事(その1)

楠木判官山門へかへつて、次の朝律僧りつそう二三十人にさんじふにん作り立てて京へ下し、ここかしこの戦場にして、死骸をぞ求めさせける。京勢きやうぜい怪しみて事の由を問ひければ、この僧ども悲歎ひたんの涙を押さへて、「昨日の合戦に、新田につた左兵衛さひやうゑかみ殿・北畠げん中納言ぢゆうなごん殿・楠木判官以下いげ、宗との人々七人まで討たれさせ給ひ候ふほどに、孝養けうやうの為にその死骸を求め候ふなり」とぞ答へける。将軍を始め奉て、かう・上杉の人々これを聞いて、「あな不思議や、宗との敵どもが皆一度に討たれたりける。さては勝軍かちいくさをばしながら官軍くわんぐん京をば引きたりける。いづくにかその首どものあるらん。取つて獄門に懸け、大路おほちを渡せ」とて、敵御方の死骸どもの中を求めさせけれども、これこそとをぼしき首もなかりけり。




楠木判官(楠木正成)は山門(延暦寺)に帰ると、次の朝律僧([持律・持戒の僧])を二三十人仕立てて京に下し、ここかしこの戦場で、死骸を探させました。京勢は怪しんで何をしているのかと尋ねると、この僧どもは悲歎の涙を抑えて、「昨日の合戦で、新田左兵衛督殿(新田義貞)・北畠源中納言殿(北畠親房ちかふさ)・楠木判官(正成)以下、主な人々七人が討たれましたので、孝養のために死骸を探しております」と答えました。将軍(足利尊氏)をはじめ、高(高師直もろなほ師泰もろやす)・上杉(上杉憲顕のりあき憲藤のりふぢ)の人々はこれを聞いて、「なんと不思議なことよ、主な敵どもが皆一度に討たれるとは。ならば勝軍をしながら、官軍は京を引いたのか。どこにその首どもがあるのか。取って獄門に懸け、大路を渡せ」と、敵味方の死骸の中を探させましたが、それらしき首はありませんでした。


続く


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by santalab | 2016-02-08 18:36 | 太平記 | Comments(0)

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