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「太平記」金剛山寄手ら被誅事付佐介貞俊事(その8)

ひじり形見の刀と、貞俊さだとしが最期の時着たりける小袖とを持つて、急ぎ鎌倉へ下り、かの女房をたづね出だし、これを与へければ、妻室聞きも敢へず、ただ涙の床に臥ししづみて、悲しみに堪へ兼ねたる気色に見へけるが、そばなる硯を引き寄せて、形見の小袖の妻に、

たれ見よと かたみを人の 留めけん 堪へてあるべき 命ならぬに

と書き付けて、形見の小袖を引きかづき、その刀を胸に突き立てて、忽ちにはかなく成りにけり。




聖は形見の刀と、貞俊(北条貞俊)が最期の時に着ていた小袖を持って、急ぎ鎌倉へ下り、かの女房を探し出し、これを与えると、妻室は聞きも敢えず、ただ涙の床に臥し沈んで、悲しみに堪へかねたように見えましたが、側にあった硯を引き寄せて、形見の小袖の褄に、

誰に見せよと、形見を残されたのでしょう。この悲しみに堪えて生き永らえる命とも思えませんのに。

と書き付けて、形見の小袖を引き被き、形見の刀を胸に突き立てて、たちまちにはかなくなりました。


続く


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by santalab | 2016-03-21 08:33 | 太平記 | Comments(0)

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