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「太平記」身子声聞一角仙人志賀寺上人事(その2)

婆羅門二の眼を手に取つて、「肉眼は被抜て後、きたなき物なりけり。我何の用にか可立」とて、すなはち地にげて、蹂躙じうりんしてぞ捨てたりける。この時に身子、「人の五体の内には、眼に過ぎたる物なし。これほど用にもなき眼を乞ひ取りて、結句けつく地に抛げつる事の無念さよ」と一念瞋恚しんいの心をこししより、菩提のぎやうを退けしかば、さしも功を積みたりし六波羅蜜のぎやう一時に破れて、破戒の声聞しやうもんとぞ成りにける。




婆羅門([僧侶])は二つの眼を手に取って、「肉眼は抜けば、汚いものだな。わしにとって何の役にもたたぬ」と言って、たちまち地に投げると、踏みつけて捨ててしまいました。この時に身子は、「人の五体の内で、眼ほど大事なものはなし。用にも立たない眼を乞うて、結局地に投げ捨てるとはなんとも無念なことよ」と一念瞋恚([燃え上がる炎のような激しい怒り・憎しみ])の心を起こしたので、菩提の行は無駄となり、功を積んだ六波羅蜜([仏の境涯に到るための六つの修行])は一時に消えて、破戒の声聞([釈尊の教えを忠実に実行はするが、自己の悟りのみを追求する出家修行者のこと])となりました。


続く


by santalab | 2017-01-04 07:52 | 太平記

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