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「太平記」八幡合戦事付官軍夜討の事(その10)

数日すじつあつて後、淀の大明神だいみやうじんの前に浅瀬ありと聞き出して、二千余騎を一手になし、流れをつて打ち渡すに、法性寺の左兵衛さひやうゑかみただ一騎、馬の駆け上がりに控へて、敵三騎切つて落とし、りたる太刀を押しなほして、閑々しづしづと引きて返れば、山名が兵三千余騎、「大将とこそ見奉るに、きたなくも敵に後ろをば見せられ候ふものかな」とて追ひ懸けたり。「返すに難き事か」とて、兵衛の督取つて返してはつと追つ散らし、返し合はせては切つて落とし、淀の橋爪より御山おやままで、十七度じふしちど迄こそ返されけれ。されども馬をも切られず、我が身も痛手を負はざれば、袖の菱縫ひしぬひ吹き返しに立つ処の矢少々り懸けて、御山の陣へぞ帰られける。




数日あって後、淀大明神(現京都市伏見区にある與杼よど神社)の前に浅瀬があると聞き出して、二千余騎を一手になし、流れを切って打ち渡すと、法性寺左兵衛督(藤原康長やすなが)がただ一騎、馬の駆け上がりに控えて、敵三騎を切って落とし、曲がった太刀を押し直して、閑々と引いて返れば、山名(山名時氏ときうぢ)の兵三千余騎が、「大将と見るが、卑怯にも敵に後ろを見せるとは」と追いかけました。「返せというか」と、兵衛督は取って返してぱっと追い散らし、返し合わせては切って落とし、淀の橋詰より八幡山まで、十七度まで返しました。けれども馬も切られず、我が身も痛手を負うことなく、袖の菱縫([兜のしころ、鎧の袖・草摺などの裾板に、赤革の紐や赤糸の組紐でX形に綴じた飾り])吹き返し([兜の左右の錏の両端が上方へ折れ返っている部分])に立つ矢を少々折り懸けて、八幡山の陣に帰りました。


続く


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by santalab | 2017-06-01 07:56 | 太平記 | Comments(0)

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