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「太平記」山名右衛門佐為敵事付武蔵将監自害の事(その7)

宮方手合はせの軍に打ち勝つて、気を揚げ勇みに乗つて東の方を見たれば、土岐の桔梗ききやう一揆、水色の旗を差し上げ、大鍬形おほくはがた夕陽せきやう耀かかやかし、魚鱗に連なりて六七百騎がほど控へたり。小林これを見て人馬に息をも継がせず、やがて懸け合はせんとしけるを、山名右衛門うゑもんすけ扇を揚げて招き止め、荒手の兵千余騎を引き勝つて相近付あひちかづく。土岐も山名も閑々しづしづと馬を歩ませて、一矢射違ふるほどこそあれ、互ひに諸鐙を合はせて懸け入り、敵御方二千余騎、一度にさつと入り乱れて、弓手に逢ひ馬手めてに背き、半時許り切り合ひたるに、馬烟むまけぶり虚空にまはつてつじかぜ微塵みぢんを吹き立てたるに不異。太刀の鍔音つばおと・鬨の音、大山たいざんくづし大地を動かして、すはや宮方打ち勝ちぬと見へしかば、鞍の上空しき放れ馬四五百疋、河より西へわしり出でて、山名が兵のきつさきに首を貫かぬはなかりけり。




宮方は手合わせの軍に打ち勝って、気を上げ勇みに乗って東の方を見れば、土岐の桔梗一揆([土岐氏一族の強力な武士団])が、水色の旗を差し上げ、大鍬形([兜の前立の一])を夕陽に輝かせて、魚鱗([兵法で、八陣の一。中央が突き出した陣形])に連なり六七百騎ほど控えていました。小林(左京亮)はこれを見て人馬に息をも継がせず、たちまち駆け合わせようとしましたが、山名右衛門佐(山名師氏もろうぢ)が扇を上げて招き止め、新手の兵千余騎を引き選って進ませました。土岐(土岐頼康よりやす)も山名(師氏)もゆっくりと馬を歩ませて、互いに諸鐙を合わせて駆け入り、敵御方二千余騎が、一度にさっと入り乱れると、弓手([左])に当たり馬手([右])に別れ、半時ばかり切り合いました、馬煙が虚空に舞い上がりまるで旋風が微塵を吹き立てたようでした。太刀の鍔音・鬨の声は、大山を崩し大地を動かして、すでに宮方が打ち勝ったと見えると、鞍の上空しき放れ馬が四五百匹、川(鴨川)より西へ走り出て、山名(師氏)の兵の切っ先に首を貫かぬ者はいませんでした。


続く


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by santalab | 2017-06-19 07:17 | 太平記 | Comments(0)

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