Santa Lab's Blog


「宇津保物語」楼の上(その7)

思ひ当てに、かの見給ひし手よりは、いとなまめかしうあてに書きたれど、「それなめり。げに、まがへる心かな」と思す。立ち返り、「心憂く。もて離れては思されじものを。『今よりは、親などとこそ頼み聞こえさせむ』と思う給へられるれ。いと忠実まめやかに、年来、『いかでものせさせ給ふらむ』と嘆き聞こえ給ひて、『思ひのほかならむ御様にてものせさせ給はば、御迎へも、いかでか』などなむ聞こえ給ふ。一人、心細くて思う給ふるに、いとうれしく見奉るも、いと頼もしくなむ思え侍る。『殿をば、かたじけなけれど、さる方に思ひ聞こえ給ひて、心安く思はば、取り分きて』となむ、君には語らひ聞こえさする」と聞こえ給へり。




大将【藤原仲忠】の思うところ、あの歌の字に比べて、たいそう魅力的で上品な筆跡でしたが、「あの女に間違いない。まさか、疑っておるのでは」と思いました。再度、「悲しいことです。他人と思ってほしくはありません。『これからは、親とでも思って頼りにしてほしい』と思っております。右大臣殿【藤原兼雅】もたいそう心配して、最近は、『いったいどうしておるのであろう』と悲しんで、『もし思いもしない暮らしをしておるのなら、迎えに、行かぬことがあろうか』などと申しております。ただ一人、物忌みに出かけて心細く思っておりましたが、幸運にも巡り会うことができました、なんとも頼もしい仏であることかと思っております。『殿【藤原兼雅】を、もったいなくも、夫と思われて、頼みとされるのならば、とりわけ大切にするよう』と、君【宮の君。藤原仲忠の長男】にも話しましょう」と伝えました。


続く


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by santalab | 2017-11-02 08:44 | 宇津保物語 | Comments(2)
Commented by 佐藤綾乃 at 2017-11-14 18:44 x
こんにちは。今日はSanta Lab's Blogで「曽我物語」の記事を読んでいましたが、持っている「曽我物語」の本に同じ箇所を探してみたところ、ページを見つからなかったのです。どのバージョンからその箇所をお取りになったのですか。教えていただければと思います。よろしくお願いします。
Commented by santalab at 2017-12-01 21:09 x
おそらく「国民文庫」だと思います。
手元にありませんので。「日本古典文学大系 88」ならあるんですけど 。

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