帥は、この殿の御徳に、大納言になり給へり。
面白は、病重くて法師になりにければ、音にも聞こえぬなるべし。
かの典薬の助は、蹴られたりし病ひにて、死にけり。「これ、かくておはするも、見ずなりぬるぞ、口惜しき。などて、あまり蹴させけむ。しばし生けておいたらんものを」とぞ、男君のたまひける。
帥(四の君の夫)は、太政大臣殿の徳によって、大納言になりました。
面白の駒は、病を重らせて法師になったので、消息も分からなくなってしまいました。
典薬助は、蹴られて病気になり、死んでしまいました。「落窪の君が、わたしの妻でこうしていることを、見せずに終ったのが、悔しい。どうして、あれほど強く蹴ったのだろう。しばらく生かしておけばよかった」と、太政大臣は申しました。
(続く)